初開催の2006年から2017年まで続いたパンクスプリングは、日本で存在感を放ったロック・フェスティバルです。テレビ局主催のこのイベントは、パンクの複数形と春を意味するスプリングからイベント名が名づけられています。開催日は開催年によって異なりますが、3月下旬か4月の上旬と春に開催されたことから、春フェスとして定着しました。
開催場所は東京会場と神戸会場の2つで、前者は千葉の幕張メッセ、後者は神戸ワールド記念ホールです。海浜幕張駅や市民広場駅といった、比較的利用者数の多い駅が最寄駅なので、車よりも公共交通機関と徒歩を利用する人の割合が圧倒的でした。ただし、東京会場の幕張メッセは数が限られながらも駐車場が利用できた施設です。初期の頃は大阪や名古屋の会場が使用され、東京会場と共に多くのファンが集まっています。
都市型の春フェスのパンクスプリングでは、パンクやロックにスポットライトを当てられ、国内外の多くのアーティストが参加しました。開催日数も開催年で違いますが、ほぼ毎年2~3日の日程での開催です。パンクスプリングはテレビ局とイベント事務局主催で、複数のFM局が後援、その他企業が協力という形で開催が行われたイベントです。パンクとロック・フェスティバルといっても、年代的に80年以前のアーティストは殆ど出場がありませんでした。反対に、ジャンルがパンクやロックに当てはまらないアーティストも出場するなど、必ずしも厳格ではなかったといえます。それでも、日本を代表した大規模なロック・フェスティバルだったのは間違いなく、毎年楽しみにしていたファンも少なくなかったようです。
一方、2017年開催終了の発表はまさに青天の霹靂で、誰も予想していなかった終わりです。大震災で中止になった2011年を除き、毎年決まった時期に開催されていた春フェスですから、惜しまれながら終了したのも頷けます。ただ、後継フェスティバルとして、2018年にはヴァンズ・ワープド・ツアーが開催されました。ヴァンズ・ワープド・ツアーは、1995年に初開催されたアメリカ最大級のロックとエクストリームスポーツの都市型フェスティバルです。しかし、このヴァンズ・ワープド・ツアーも2019年に終了してしまったので、後継フェスティバルを含めて実質的にパンクスプリングは終わりを迎えた形です。
約10年の歴史を刻んだパンクスプリングは、ロック・フェスティバルとして音楽の文化を支え、国内外のアーティストやファンの交流を促進しました。開催終了で1つの時代は終わりましたが、ファンの間では今も語り継がれていますし、再開を待ち望む声も少なからずあります。